To a loved one 〜愛しき者へ〜

三河から来た美少女

━━清州女子高天守。

「佑美様。」
麻衣が、近付いて来て声をかける。

「ん?」
佑美が麻衣を見る。

「三河にて、動きがあったようです。
数千人程の生徒が、尾張地区方面へと向かって来てます。」
と、麻衣が言う。

「━━今川か...?。」
佑美が答える。

「おそらく...。」
麻衣が言う。

「麻衣、尾張と三河の地区境まで向かおう。」
佑美が言った。

「かしこまりました、すぐに準備致します。」
そう言って、麻衣は天守を出ていった。

(ここまで来たらやるしかない...。)
佑美は、心に決めていた。

━━そして有能な麻衣は、やはり違った。

『斎藤愛未様
織田佑美家臣の羽柴麻衣です。
三河より尾張方面へ、今川勢らしき軍の侵攻がございます。
愛未様のお力を、お借りする事になるかも知れません。』

佑美からの戦の準備の命(めい)を受けたあと、天守を出てすぐに、愛未にメールを送っていた。

『麻衣
援軍の件、了解した。
何かあればすぐに連絡して。』

すぐに、愛未からの返信があった。

それから、三河地区との境にある学校に連絡をして、戦の準備を進めた。

━━尾張地区と三河地区の地区境。

佑美達は、今川の軍を迎え撃つべく待機していた。

━━しばらくすると、遠くから車やバイクの音が聞こえて来た。

この時代、女子高生の間で、あるルールがあった。
それは、車とバイクに関するルールだ。
一年生は、原付バイクにしか乗れない。
二年生は、原付バイクと自動二輪車に乗れる。
三年生は、原付バイクと自動二輪車の他に、車も乗れる。
勿論、免許を取得している事が条件ではあるが...。
そして学年に関係なく、小名や大名になれば車も乗れる。
しかし、十八歲にならないと車の運転が出来ない為、運転免許を持っている三年生の家臣に、運転してもらう必要がある。
そして、それぞれの大名にはチームカラーのような色がある為、車体の色は、基本的にその色で統一されている。
更に一般の女生徒は、その地区の大名や小名と同じ車やバイクに乗ってはいけない。
ちなみに佑美の車は、黒の日産・シーマ450VIPである為、尾張地区の女生徒は、色とかに関係なく、シーマに乗ってはいけない。
羽柴麻衣は、まだ二年生で車の運転が出来ない為、自動二輪車に乗っている。
車種はカワサキNinja 400Rで、色は黒である。

━━やがて、オレンジを基本とした色の車やバイクが近付いてきた。
今川美波のカラーがオレンジなので、今川系の軍勢で間違いないようだ。

その中心にオレンジの三菱ランサーエボリューションIVがあった。

その車が佑美達の前で止まると、後部座席から一人の美少女が降りて来た。
茶髪のストレートが良く似合う、スラリとした美少女だ。

「今川美波家臣、岡崎(おかざき)女学院二年、松平七瀬(まつだいら・ななせ)である!!」
と、その美少女は名乗った。
七瀬は、二年生であるが車で移動している。
つまり、小名か大名である。

佑美は、しばらく松平七瀬を見てから、

「━━七瀬?」
と口を開いた。

七瀬も、しばらく佑美を見て、
「ゆ...み...さん?」
と言った。

「なんだ、七瀬か。
久し振り。」
と、佑美から笑みがこぼれた。

「はい、お久しぶりです。」
と七瀬も笑顔になる。

「佑美様の、お知り合いの方ですか?」
と、麻衣が訊いた。

「うん、七瀬は私の幼馴染で昔、尾張地区に住んでいたんだ。
確か、私が小学校二年の時に引越したから、十年振りぐらいかな?」
と言って、佑美が七瀬を見る。

「はい、十年振りくらいです。
まさか、こんなところで佑美さんに会うとは...。」
と七瀬。

「なんか七瀬とは、やり合う気になれないなぁ...。
━━麻衣、今日は帰ろう。」
と、佑美は言った。

「かしこまりました。」
と麻衣が答える。

「七瀬、今度ゆっくり話そう。」
そう言って、佑美達は引き上げた。

「━━私達も戻りましょう。」
と、七瀬達も戻っていった...。
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