眼鏡を外した、その先で。
深呼吸を繰り返し、どうにか声を絞り出す。
そんな私になぜか高原は楽しそうだ。

「なぜそんなことを思われたのですか?」

「……高原は私に、その、……好きとか……愛してるとか、……云ってくれないから」

「あんなに毎回、愛して差し上げているのに?」

「……!」

右の口角だけをつり上げて笑う高原に、頬がかっと熱くなった。

高原がこんなに性格が悪いだなんて知らなかった。

「……大体、なによ。
いつも無表情の癖して」

「ああ、あれは仕事用の顔です。
ご存じなかったのですか」

「最悪!
あんたと結婚なんてこの世の終わりよ!」

「……本当に?」

熱い瞳にじっと見つめられて息が止まる。
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