守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
***


「ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております」


閉店間際。

人も少なくなってきて、団体客だけになった頃。

お酒も入って上機嫌になった団体客のお客様の1人が私を見て小さく笑った。


「女が寿司屋ね……男の職場にまで乗り込んで……嫌な世の中だね~」

「……」


わざと聞こえる様に喋ると周りを巻き込み出した。


「お前らもそう思うだろ?」

「いやー……」

「女は家で家庭を守っていればいいんだよ!」


包丁を研いでいればいきなりおしぼりが飛んできた。

丁度手元に来たため、刃が指を掠めてしまう。


「……」


指に痛みが走るが、じわりと流れ出した血を見つめながら黙っていた。
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