守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「ここは……」


山瀨さんと来たのは小さな丘だった。
何度か2人で訪れたことのある場所。

ここに来た理由。
それは勇気が欲しかったからだ。


「山瀨さん」

「は、はい」


いきなり名前を呼んだせいか驚きながら姿勢を正す彼。
ゆっくりと視線を混じり合わせれば、トクンと胸が高鳴った。

とっくに気が付いていた自分の気持ち。
それと向き合う為にここに来た。


「私……ずっと前に言いましたよね?
『私は恋愛をする気はありません』って」

「……はい。出逢った当初に……フラれました」

「ははっ……その節はすみません……」


山瀨さんと出会った頃は、もう誰とも恋愛する気は無かった。
だけど、2人で同じ時間を過ごすようになって少しずつ変わっていった。


「い、いえ。俺はミサキさんと一緒にいられるだけで幸せですから」

「山瀨さん……。本当に優しい人ですね」

「そ、そんなこと!」

「そんな貴方だから……好きになったんですけどね」

「え……」


想像もしていなかったのか山瀨さんは茫然と固まっていた。
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