守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~
「っ……痛くない……えっ……」

「あっ……」


激しく倒れこんだはずなのに体に痛みは無かった。

目を開ければ目の前には整った顔つきがある。

瞬きを忘れるくらい山瀬さんは呆然と私を見ていた。
それは私も同じで彼から目が離せなかった。


「ひゅ~ひゅ~」


周りからの囃し立てる声で漸く我に返る。

どうやら私は山瀬さんを押し倒す様に倒れたみたいだ。


「申し訳ありません!! お怪我はありませんか!?」


急いで体をどかし、山瀬さんを見渡す。
見たところ大丈夫みたいだ。
濡れたスーツ以外は。

私の制服も濡れてしまったみたいだ。
湿った服を見るとタメ息が出そうになる。

だがそれどころではない。


「あの……?」


返答がない。

と言うか、固まったまま動かない。
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