ブラック・ストロベリー



「もう会うつもりないって言ったよね」

「ほんとに?」


コンビニにたどり着く一歩前で、陸は止まる。
私の意思を確かめるように、まっすぐに私の目を見据える。



「…なに?なんであんたがそんなこと言うの」


ふい、と目を逸らして陸を追い抜かす。

陸に身長を抜かされたのはいつだっけ。
悔しいけど4つ離れた弟との身長差は15センチくらいあるだろう。



「行くよ、陸」


振り向いて、何か言いたげな顔にわざと話題を逸らす。


「お酒、買わないよ」



諦めたように、それでも諦められないように。

私の後を追うように足をすすめた心配性の弟を見て、私は先に店内に入った。



「チューハイ」

「…生意気だ」

「おごってくれるんだろ、お姉ちゃん」


ケラケラ笑って、かごにお酒を入れてく弟に呆れながら、今日だけは許してあげようなんて柄にもなく思った。



「ガリガリくんねじゃあ」

「は!それはねえよ、まあうまいけどさ、今日くらいはハーゲン行こうぜ太っ腹姉ちゃん」

「…調子の良い弟だよ全く」

「母ちゃんはチョコな、親父は…一番安いバニラにすっか、おれ期間限定ー」

「お父さんに謝れ」

「ごめんな親父」



結局、調子に乗った生意気な弟の通り4つもハーゲンを買って、もちろんお酒も買って、おつまみだとか言ってスナック菓子もかごに入って、私の財布からはすんなりお金が抜けていった。

まあ、素直じゃないけど多分心配してくれてるらしいから、その優しさに免じて今日だけは許してやろう。



今度絶対ミホちゃん連れてきてもらおう。
陸のデレデレなところ聞き出して盛大にバカにしてやろうと思う。


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