ブラック・ストロベリー
「アーイスがとーける」
「陸さき走って帰って冷凍庫入れといてよ」
「やだよくそあちーもん」
重たいコンビニの袋はどちらとも陸に持たせ、さっきと同じ道を引き返す。
半分覆われていた月が雲から顔を出してこちらを照らしていた。
「ねーちゃん、」
「んー?」
「俺さ」
少し先を歩く弟が、微笑んでるように細く上向きの月を見上げながらはっ、と息を吐いた。。
「なに、そんな息はいても白くないよ、夏だから」
まだまだ冬はこない。
人肌が恋しくなる前に、わたしは切り替えなければいけない。
「すげーとおもってた、姉ちゃん」
唐突の告白に、こちらを見ずに先を歩く陸の大きな背中を黙って追った。
「姉ちゃんたちみたいに、ずっと一緒で進路別でもずっと一緒にいてずっと仲いいの、おれすげーとおもってた」
すげーよ、繰り返した言葉が車も通らない住宅街にポツンと消えていく。
私は、何も言わなかった。
またその話?なんて笑えもしなかった。
「高2から今までずっと一緒にいるなんて、すげーじゃん、ケンカしても結局なんだかんだ仲いいし、ふたりとも、幸せそうだったし」
高校2年生、まだあのころは17歳だった。
偶然たまたま出会った、何処かで運命かとも思った。
どれだけ同じ時間を過ごしてきたんだろう。
高校3年間、バスケ部のマネージャーしてた私と、音楽室で、ギターかき鳴らして歌ってたあいつ。
大学4年間英文学に通った私と、経済科に通ったアイツ。
バスガイドをしている私と、テレビの世界にいるアイツ。
同じことなんてひとつもしなかった。
クラスだって、一回しか同じにならなかった。
嫌いなものどころか、好きなものすら合わなかった。
なんで、ずっと、