ブラック・ストロベリー




かっこつけて。

もう会わないって決めた、最後の強がり。


着信が鳴るたびに、自分から着拒にしたあのメロディが鳴らなくて傷つく胸が。

アイツの仲間からの、誤解を解くメッセージに既読をつけないことが。


私の隣で、ギターかき鳴らしてたあの歌声が頭から離れないことが。




「嫌いなのは、自分」


好きなのに、胸を張ってアイツの隣にいれない自分が嫌い。

自分から遠ざけて、傷ついてる自分が嫌い。

誰にも、何も言わない、自分が嫌い。


何にも誇れない、嫌いばっかの自分に、あんなキラキラした人の隣にいる資格なんて少しも残っていないのだ。



「未練たらたらじゃねえかよ」


陸が、ふっと笑うから、私もつられて笑ってしまう。



「未練なんてないフリしてればなくなるからいいの」

「なんで、」


家のドアに手をかけた私の腕をつかみ、無理矢理そちらを向かされた。



「姉ちゃんは何がしたいんだよ」



傷ついた表情。

何も言わずにあそこから逃げた私のこと、何度もアイツの立場になって考えたのだろう。



「一人に、なりたいの」




違う。

違うよ。


朝目が覚めたら、そこは自分の家じゃない。

隣で幸せそうに寝てるアイツもいない。


自分から望んだ結末に、満足なんかしてなくて。





ふたりぼっちに、なりたかった。

だから私は、一人ぼっちになるの。





「…嘘つきだな」


陸が苦しそうに笑う。

私の乾いた笑いは、吐き出した息とともにおっこちた。



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