ブラック・ストロベリー
陸の瞳が、真剣に私をとらえていた。
心の奥まで見透かされるように。なんせ姉弟だ、もうとっくに見透かされてるかもしれない。
「姉ちゃんを幸せにできんのは、アオイくんしかいねえだろ」
「そんなこと、ない」
ううん、違う。
わたしのこと幸せにできるのはあいつしかいない。
けど、アイツを幸せにできるのはわたしじゃない。
「…じゃあいいよ、否定してろよずっと、アオイくんのことも考えろよ」
自分勝手だってことも、
嘘吐きだってことも、
誰に何言われようと、分かってる。
「ライブの日、四時半に姉ちゃん迎えに行くから」
「やめて」
「じゃあ自分一人でくんの?」
「、行かないよ」
しつこいよ。
私の意思を無理やりねじ込ませようとしてるのまるわかりだよ。
でも、それくらい私とアイツのよりを戻してほしいって、多分陸はそう思ってるのかも知れない。
「絶対来るよ、姉ちゃんは」
机の上に、一枚のチケットを置いて、陸は意味深に笑みを見せた。
「許さねえもん」
なにが、誰が、何を許さないんだって。
なんて聞く暇もなく、陸はあっという間に自分の大学の話に話題をすり替えた。