ブラック・ストロベリー
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「大可中学校3年4組の皆さん、こんにちは。今回みなさんの中学いちばんのビックイベント修学旅行にガイドとしてお供させていただきます、比奈瀬深咲です、よろしくお願いします」
場所は京都駅。
すこし浮かれて騒がしい空間、揺られるバスの車内で今日の仕事が始まった。
「ヒナセさんいくつー?」
学生お決まりの質問に、苦笑しながら答えれば、お決まりの「若いー」なんていう男女の声が届く。
よっぽどあなたたち中学生のほうが若いでしょう、なんてその元気に圧倒されながら笑顔でありがとうございます、と返した。
「俺らのクラスあたりじゃね?!」
「隣のクラスおばさんだったしなー」
「運転手も若くなかった?」
やっぱり中学生という年頃は外見重視なのか、失礼ではあるけどかなり年の離れた上司よりかは断然毎回人気があると思ってる。
それも数年後にはわたしよりも年下の子が入ってきておばさん呼ばわりされるのだろうけど。
「いまふらっと聞こえたのでついでにご紹介しますね。今回皆さんのたびに大切なこのバスを運転しているのは、ドライバー藤こと藤野瑛太です。ちなみに年は私より二つ年上の26歳です」
「藤野です、皆さんが退屈しないような素晴らしい3日間を作るお手伝いをさせて頂きます、よろしくお願いします」
運転席のマイクから応答してくれた藤さんに女子が黄色い歓声を上げる。
「藤さん、声までイケメン!」
「ありがとうございます」
慣れたように返事をする藤さんの表情は当然見えないけれど、多分、苦笑いだろう。
年齢を問わず相変わらずの女子人気である。