ブラック・ストロベリー



「皆さんゆっくりバスを降りたら、右手で学年主任の先生がいらっしゃるので、担任の先生の話をしっかり聞いて、京都の伝統と向き合ってみてくださいね」

「ガイドさん来ないのー?」


「私はドライバー藤と、こちらで皆さんの帰りを待っているので、是非楽しんできてくださいね」



プシューというでバスのドアが開き、先に降りて中学生が降りてくるのを待つ。


「いってきまーす」

「ありがとうございました」


最近の子は礼儀正しい子も多く、降りるとしっかり挨拶してくれる子が多かった。

制服姿にリュックを背負って先生のほうに向かって言う釧路姿を見送りながら手を振る。



「ヒナセさん!!」

すると最後尾、バスを降りてきた4人の女の子が私の前で立ち止まった。


「どうかしましたか?」

「清水寺って、恋占いの石ってあるじゃないですか!」

「この子、ヒナセさんに玉砕したあのバカのことが好きでさ、恋占いの石挑戦したいんだって!」


「ちょっと声大きいから!聞こえたらどうすんのよ!」


顔を真っ赤に染めながら怒る女の子は、友達に睨みをかましながらぎこちなくわたしの方を見ていた。

恥ずかしそうにパンフレットを握りしめて、もう片方の手で友達の制服の袖をつかんでいる。



「自由時間のとき一緒に来い占いの石案内してくれませんか!」

彼女の気持ちを代弁するように隣の子が言った。


「私なんかでよかったら、一緒に行きますよ」

「ほんとですか!!よかったねえミキ!」

「だからほんと声大きすぎんだってば!ヒナセさんすみません、よろしくお願いします」



頬を染めた女の子がぺこりとお辞儀をして、ふんわり私を見て笑う。

かわいいなあ、恋する女の子って感じだ。



「自由時間になったらこっち来るんで待っててください!」

「わかりました、楽しんできてくださいね」


すぐに集合をかける先生の声が聞こえて、女の子たちは集合場所に駆けていった。



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