ブラック・ストロベリー
「さっきの子達、来てるよ」
藤さんが指した方向、遠くから女の子4人が楽しそうに話しながらこちらに向かってくるのが見えた。
「…藤、さん」
「戸惑ってる?俺が比奈瀬のこと好きだって言ったから?」
意地悪に口元に弧を描いて私の様子を見て楽しむその姿に、言われた通り動揺していた。
付き合おうと言われたこと、それだけじゃない。
アイツとのことを、知られていることにも。
「彼氏はいません、でも募集もしてませんってことは、やっぱりあの報道が原因の破局?」
ばち、と視線が絡んで、不敵に笑う藤さんから慌てて目をそらした。
「ごめん、意地悪しすぎた。聞かれたくないよなそんなこと」
「いや、別に大丈夫です、全部その通りなので」
動揺を隠せなくてバックにケータイを放り込んで席を立った。
「…じゃあ、いってきます」
「うん、告白、なかったことにしないでね」
笑顔で後押しされて、なんて言えばわからなくて、わかりました、なんて業務連絡の返しになってしまったけど、そんなあからさまの態度を見て藤さんはまた可笑しそうに笑った。