ブラック・ストロベリー
「あ!ヒナセさ―んこっちこっち!」
女の子四人組の一人がバスを降りた私に気づいてこちらに手を振る。
手を振り返すと、走って私の元まで駆け寄ってきてくれた。
「清水寺散策、楽しかったですか?」
「超絶楽しかったです!恋みくじもやったんですよ~」
大吉だったの!なんて嬉しそうに笑う女の子たちはキラキラしていてとてもかわいい。
「じゃあこの調子で恋占いの石もいい結果望みましょうね」
「もちろんでーす!ねー?ミキ!」
「~もううるさいなちょっとそろそろこっちも恥ずかしいんだから!」
張本人のミキちゃん、という女の子はポニーテールで隠れない耳まで真っ赤にさせて友達を叩く。
大吉だったおみくじをわたしに恥ずかしそうに、でもすごく嬉しそうに見せてくれた。
「素直だね~反応が」
「本人の前では超素直じゃないけどね!」
「だから余計なお世話だって!」
中学生に囲まれながら、清水寺の目的地・恋占いの石まで話しながら向かう。
「ミキちゃんの好きな男の子ってどんな子なの?」
隣を歩くミキちゃんの緊張をとかそうと質問してみたら、前を歩く女の子たちが振り向いてニヤニヤする。
その子たちに見ないで!ってまた照れ隠しに怒れば、リュックのベルトを両手でつかんで視線を上目遣いにこちらに合わせてくれた。
「…ただのおちゃらけたバカみたいなやつです」
少し恥ずかしそうに口をとがらせながら、まるで暴言にしか聞こえない彼の特徴を聞いて笑ってしまう。
「そっか、じゃあそんな彼のどんなところが好きなの?」
「~っ、根は優しい奴なんです、意外と周りのこととか見てるし、ちゃんと考えて行動してるし、悪いやつじゃないから、」
「全部好きなんだね」
なんて言って笑って見せれば、やっぱり頬を染めながら、小さくうなずいた。
中学生って本当にかわいい。
ただまっすぐで、純粋なのが、すごく伝わる。
「趣味も、似てるんです、好きな女優とかアーティストとかも全く同じだし」
「そうなんだ、誰が好きなの?」
うれしそうに話すミキちゃんの話に耳を傾ける。
「ブラスト、ってバンド知ってますか?あたしもアイツも、あのバンドが一番本当に大好きで」
思わず、その名前が出てくると思わなくて、不思議そうにこっちを見つめる瞳に動揺している自分が映った。
「ヒナセさん?」
無意識に反応してしまった自分が悔しくて、慌てて気を取り戻して笑って見せた。