ブラック・ストロベリー
時間がたつのはあっという間だ。
二日目、バスはもう宿に向かっていた。
今日が終わらなければいいって、仕事の最中に何度考えただろう。
相変わらず車内は賑やかだった。
「あっれれ〜?今日はなんか大人しくない?」
「おいおい突っ込むなって、ほらよくみろよ」
「昨日の夜の自由時間いねえと思ったらよー」
「出来上がってんだもんなー!」
ヒューヒュー、冷やかしの嵐の車内に思わず笑みがこぼれる。
頬を真っ赤に染めたふたりが、ぎこちなく隣同士、座っていた。
「うるせーな!ほっとけ!」
そういって、初日にわたしのことを公開ナンパした男の子は冷やかしのほうへ恥ずかしそうに怒鳴った。
その横には、恥ずかしそうに周りの視線から目を背けたミキちゃんがいる。
「おいおい、俺はきーてねーぞ」
先頭座席から後ろを振り返って男子生徒に加勢する担任の先生は、心底楽しそうにムードメーカーの彼をおちょくっていた。
「はい!ここで、質問コーナーの時間です」
「どっちから告白したんですかー」
「なんて言ったんですか?」
「返事の言葉は?」
「夫婦漫才がグレードアップすること期待してもいいんですかー?」
犬猿の仲、いつも言い合いばっかりで、でもすごく仲いいんです。
そう、クラスの中でも目立つ二人が、誰もがくっつくことを楽しみにしているんだと、恋占いの石に挑戦しているミキちゃんに内緒でお友達に耳打ちされたのを思い出して、わたしまでにやにやしてしまう。
可愛くて、本当にお似合いだなあ。
バス内の盛り上がりは最終日にして最高潮だ。
中学生ならではの若さが車内に充満して、懐かしいなと思いつつ、ちゃっかり隣に座っているふたりをみて微笑ましく思う。