ブラック・ストロベリー








「ただいま」


「おかえりー。なんか久しぶりね、夜ご飯できてるよ」



実家に帰ると、3か月たってもちっとも変わらず元気な母親が玄関で出迎えてくれた。
さみしいだろうなんて心配は余計だったかもしれない。


「お父さんは?」

「今日も飲み会だってさ、いい年して酔っぱらって帰ってくるのほんとくさいからやめてほしいわ」


洗濯する身にもなってほしい、なんてつべこべ文句を言いながらリビングに戻るお母さんの続いて家に上がる。

お父さんとお母さんは何十年たっても仲いいまんまで、結局いつも酔っぱらったお父さんをしっかり笑顔で出迎えるのだけれど。



変わらないのだ、ここだけは。

実家という帰る場所があるだけで安心するのだと、この年でようやく理解する。



「ハナ!元気だった!?」


リビングのソファには私の愛するハナ(猫)が気持ちよさそうに眠っていた。
にゃー、とひとつ鳴いて私の腕に飛び込んでくる。相変わらずとてもかわいい。



「ハナもばあちゃんなんだからほどほどにしなよー」

「お母さんよりは若いもんね、ハナ」


返事をするようににゃー、と鳴くハナは私の腕の中で気持ちよさそうに欠伸する。
もうとっくにおばあちゃんになったハナは一日の大半はこのソファで寝てるって、そう言えばお母さんが写真を送ってきてたっけ。



「ご飯できてるんだから、早く食べよ—ぜ」

「あ、陸も帰ってたの?」

「姉ちゃん帰ってくるからたまには帰れって言われたんだよ」



腹減った、とだるそうに椅子に座る弟の陸。
現在大学2年生、実家を出て彼女のミホちゃんと同居してる。

生意気馬鹿な割に彼女にはぞっこんらしく、それはもちろん彼女のミホちゃんから情報入手済みである。


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