ブラック・ストロベリー
その声が、その音が、わたしの思い出ぜんぶを無理やり引っ張り出して来た。
会わなかった、たった数日間で作り上げたであろうその曲が、アオイのすべてなんだと思った。
歌詞なんて一回聴いただけじゃ覚えらんないし、聞き取ってたらもう次をうたってるし、訳わかんないけど、それだけど、わけわかんないけど涙があふれて止まらない。
悔しいんだ、アイツが絶対来いよなんて言うから、来てしまった自分が悔しい。
結局、アオイに振り回されてるのは私なのだ。
そうやってすぐ音に頼るところ、
普段は絶対甘いこと言ってくれないのに、全部音楽に詰め込んで、叫ぶように吐き出すのは、アオイがとてつもなく不器用だからなんだもんね。
知ってるよ。
言葉になんてしなくて、
欲しい言葉なんて言ってくれなくても。
繋いだら逃がしてくれない左手も、
片耳だけ渡された真っ赤なピアスも、
先に寝てたら怒ることも、
目が覚めたとき、隣で幸せそうにふにゃって笑うのも、
くだらない日常の話をしてくれるのも、
全部、
アオイはずっと、わたしに好きっていってた。