ブラック・ストロベリー
「 嫌いだよ っていうと 拗ねた顔して わたしもだっていう きみが好きだった 」
素直じゃないのは、お互い様だ、
アオイの嫌いって言葉が、わたしは好きだった。
嫌いって言葉が、まるでわたしのこと好きだって言っているようで、だから同じように嫌いってかえす。
かえした言葉にふてくされて、でも、笑ってたね。
「扉を開けたら 俺を迎える それはきみがいい」
鍵を開く音が、はやく聞こえればいいのに、空が暗くなると、その扉をちらちらと気にしていた。
ただいま、そう言ってギター背負って帰ってくるアオイの疲れ顔の中で見せる笑った顔がすきだった。
「はやく幸せにしてよ 幸せにしてあげるから」
ねえ、いま、
わたしのことみてるでしょう。
幸せそうにはにかむ、
その表情、わたしだけのものだったのに。
ずるいよ、そうやって、どれだけ人がいても、わたしのこと見つけるんでしょう。
スポットライトの下、絡んだ視線が、わたしをいとおしそうに見つめていた。