ブラック・ストロベリー






「──好きとか、愛してるとか、そんな言葉使いたくねえんだよ」



絞るようにでてきたアオイの言葉に、同じくらい苦しくなって息を吐いた。



「そんなやっすい言葉、深咲に使いたくねえ」



なあ、こっち見て。


散々逃げてきたのに、その一言で大人しくわたしは言うことをきいてしまう。


視線が絡めば、その熱に引き込まれそうで、目をつぶれば、長い腕がわたしを閉じ込めた。



アオイの心臓の音が、一番近くで鳴っていた。



「今更なんて言えばわかんねーし、お前だって報道簡単に飲み込まねえって、勝手にそう思ってたから、報道陣が溜まってる家には帰らなかった、」



今日は帰れない、

その一言に、わかった、と返したのは私だ。


強がりに、見栄を張っていた。


たくさんの報道陣を前にして、帰れないことわかってるのに、帰ってきてほしいなんて言えなかった。



「深咲はひとりで大丈夫なんて、勝手に馬鹿みたいに思い込んで、まさか出てくなんて思わねえし、着拒されるしおまけにメンバーのも無視して連絡一切取れなくて、」



握っていた手が、背中に回った。

そうやって、割れ物を扱うみたいに大事に包んでくれるこれが、ずっと好きだった。

そんなこと言えなくて、言ってみれば、可愛いねって言ってくれたかもしれないのにね。



私の握られてた手は行き場を失って、ふらふら揺れていた。

その背中に回したかった、でも力が入らなかった。


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