ブラック・ストロベリー
「そんなの、聞いてないから、わかんない」
アオイが少しでも、わたしのこと気にしてるのはわかる。
だって、ほかの女子とは話さないのにわたしとは話す。自分の気持ち言葉にしないで行動ばっかするけど、でも悪い奴じゃない。
「じゃあ、逃げてねえで自分から聞けば?」
剛くんは何にもわかってないのだ。
「やだよ、アオイが自分から謝りに来るまで知らない」
わたしは頑固だから、一度決めたことは揺るがない。
まあ、それが普通だよね。優柔不断な人って、何に迷ってるかよくわかんない。
「あーもう、わかったよ、アオイが自分が来ればいいんだな?」
「なに?てかなんで剛くんがこんなこと聞いてくるの」
「逆にお前はここ2.3日のアオイしらねーの?マジお前のせいだから、どうにかしてくれよ」
「は?わたしなんも悪いことしてないよ」
むしろ悪いのは全部あっちだよ、って言った瞬間、剛くんの後ろから、手が伸びた。
「そーだな、俺が全部悪いよ」
「いやおっせーよ、やっとかよ」
剛くんが呆れた顔してアオイを見れば、アオイは手を伸ばして私の左腕をつかんだ。
「俺悪くねーし、全部こいつが逃げるから悪いんだよ」
左腕に力がこもって、まるで見透かされてるみたいで、わたしは腕を解こうと振った。
「なあ、俺が見えた瞬間逃げんの、ちゃんとわかってっから」
ほんとうに、アオイから逃げてたのはわたしなのだ。
謝りに来るまで知らない、なんて突っぱねて、本当は何回もアオイがわたしを探してたの知ってる。
話したくないから、逃げたんだ。
「剛、もうお前はなすことないだろ、だから貰う」
「あーいーよ好きにしろ、んでお前はちゃんと部活でろ」
「わかってる、でも終わってからな」
わたしが口出す暇もなくふたりは会話を終えて、アオイにひかれるままに、結局、わたしはまた屋上に行ってしまう。
屋上は、アオイに初めて会った場所だ。
アオイと一緒にいるのはだいたい屋上で、最近はアオイの家に行くことも多かったけど、べつに、付き合ってない。
気づいたらわたしはアオイを好きだったけど、アオイの気持ちは知らない。
キスされてわたしはうれしかったけど、アオイがした理由はわからない。
なんにも、アオイは教えてくれない。