ブラック・ストロベリー
「 今日こっちなの? 」
「 あー、夜ご飯の材料買わなくちゃいけなくて 」
冷蔵庫の中身で済ますつもりだった夜ご飯は、見事オムライスになるには不十分なので今日はいつもと反対の道を歩く。
「 俺の彼女は料理下手すぎてもはやいつも俺が作ってるんだよなあ、アオイくんは羨ましい限りだ 」
「 でも彼女さんが作っても残さず食べますよね?」
「 あたりまえだろ 」
そうとう彼女さんを溺愛してる先輩なので、人に言えないくらい頬緩みっぱなしなのお伝えしようと思うけど面白いから彼女さんにはこっそり教えようと思う。
「 美咲 」
先輩とスーパーの方へ向かって歩いていると、聞き慣れた声が聞こえて振り返った。
「 あおい、」
ギターケースを背負って、わたしをじっと見つめてた。
「 どうも、」
隣に並んでいた先輩がアオイにむかって会釈した。
「 どーも、」
アオイは、口には一切出さないくせに、本当にわかりやすいので、さすがの私でも、もちろん先輩にもわかったとおもう。
「 じゃ、ミサキちゃん、お疲れ様 」
ニコニコと、ひらひらこちらに手を振りながら先を歩いていく先輩に軽く会釈をしながら、アオイの方へ向いた。
「 バイトの先輩だよ、知ってるでしょ 」
「 知ってるけど 」
「 嫉妬ですか? 」
絶対図星なのに、こいつは絶対本当のことを言わないから、とってもめんどうくさい。
「 別に。てか何してんの? 」
「 いや、あんたがオムライス食べたいって言うからミックスベジタブル買いに行こうと思って 」
「 ふーん 」
そう言って、くるりと私に背を向けた。
「 え、帰んの? 」
「 俺今日疲れたから先帰る、よろしく 」
「 は、? 」
「 風呂入ってるわ 」
スタスタと、まるでわたしのことなんて眼中に無いようにどんどん家の方向へ歩いていくあいつの背中を、わたしはただぼーっと見つめてた。