鏡の先の銀河鉄道
 「はい、これがカムパネルラ。」
 そう言いながら、シリウスは蒼い石を差し出してきた。
 
 心のどこかで手にしたかったもの。

 それでも、目の前に出されると・・・・手を伸ばすことが出来ない。どうして、手が出せないのか?
 
 それは、自分が臆病だから?
 
 最初に感じた怖い感情だけが育ち、手を伸ばすという行動を拒絶する。石を手にして『カムパネルラ』という存在を知りたいのにそれを許してはくれない。
 そして、ジョバンニは何も言わずに俺のことを睨み付ける。ジョバンニという存在に、恐怖は倍増し、身体の機能を震わす。
 「カンパネルラにあげたくて、取って置いたんだよ。」
 「ありがとう・・。」
 
 『怖いない』
 
 自分に、何度も暗示をかけながらゆっくりと震えた手で差し出された蒼い石に手を伸ばす。
 石に触れた指先から伝わってくるのは、冷たさ。そして、その冷たさは身体の中へと侵食を始める。冷たさに遅れるようにして、頭の中をかき乱すように記憶が流れだす。
 
 小学生の時、初めて乗った銀河鉄道。ジョバンニとの出会い。
 
 
 
 
 
 この記憶は・・・何だ。
 
 
 
 
 銀河鉄道の走らない世界の記憶。
 いつ、どこでの記憶なのか俺にはわからない。

 
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