鏡の先の銀河鉄道
双子
 沢山の人を乗せた銀河鉄道は、ゆっくりをしし座をあとにした。
 
 「凄い量だな・・・。」
 溜め息ににた言葉が、自然と口からこぼれる。そして、その言葉に答えようとしているジョバンニはさっきは違い優しい表情をしていた。
 「いつも、こんな感じだよ!さっきまでの方が、珍しいんだ。」
 ジョバンニと、ギュウギュウになりながら言葉を交わしている間にどんどん息苦しくなっていくの感じる。
 
 
 満員電車。
 懐かしい。
 
 頭の中に浮かんだ言葉、そんなものだった。
 何が懐かしいのか、自分にもよく分からないのに。何かが懐かしくて、その頃に戻りたいと思う自分が存在していた。
 感傷に浸りかけていた思考を現実に呼び戻すように、男女の怒鳴り声が所内に響き渡った。
 「何で、あんたはいっつもそうなの!」
 「うるせぇーな、少し黙ってろよミザール!!俺だって考えるんだよ!」
 「あんたのない頭で、何を考えるよ!!この馬鹿アルコン!!」
 アルコン、ミザールと呼びながら喧嘩をしている男女。
 狭く混雑している車内で喧嘩をされると、少しだけ耳障りに感じる。
 「うるさいな・・・。」
 唸るような言葉で、ジョバンニはつぶやいていた。

 『マモナク、ウミヘビ座ステーション』
 
 何度も聞くうちになれてしまった車掌のアナウンスが響く。しし座を出て間もないのに、次の駅に到着した。

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