鏡の先の銀河鉄道
 自分の中では、うまく演じられたと思えるぐらいに自然な感じで挨拶が出来た。
 それなのに、目の前に座っている二人は何も答えることなく驚いた表情を見せながら顔を見合わせていた。
 「どうしたの、カムパネルラ!!」
 凄く大きな驚いた声をあげながら、アルコンはこちらに身を乗り出してきていた。彼が口にした『どうしたの』という言葉の意味が分からなかった。
 「何・・・が・・・?」
 目の前で驚いている彼以上に、俺自身が驚いていた。そして、無意識のように疑問の言葉が口から漏れる。
 「だって・・・。」
 俺の疑問に答えるために口を開いたのは、アルコンではなくミザールのほうだった。
 「だって、今日のカムパネルラいつもと違って明るいから。いつもは、こっちら挨拶しても返事もしてもらえないから・・・・。どうしたのかなって・・。」
 少し脅えたようにミザールは言葉を口にした。
 
 シリウスの言う『カムパネルラ』
 
 目の前の双子が口にしている『カムパネルラ』
 
 同じ名前で、同じ見た目なのにまるで違う存在。
 俺自身のことなのに、わけがわからなくなっていく。
 まるで、自分という存在が沢山ような錯覚を覚える。
 「俺は・・・普通だよ・・・。」
 その言葉を口にするのが精一杯だった。
 
 
 〝 困 惑 〟
 
 
 自分という人間が壊れていくような気がする。
 
 
 
 ―頭が、痛い
 
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