俺様社長の溺愛宣言
「…御崎社長、実は私」

病気の事を話そうとした時だった。ドアがノックされ、静かに開いた。

「…満里奈」
「…お兄ちゃん」

私の顔を見た一馬は、安堵の表情を見せるも、直ぐに怪訝な顔つきに変わった。

病室に入ってくるなり、零士に向かって言った。

「…満里奈を救急車で連れてきてくれたとか、ありがとうございました」

「…いいえ、私は出来ることをしただけですので」

…不穏な空気が漂う。

「…お兄ちゃん」
「…御崎社長、満里奈はこの通り、具合が良くありません。今日の所はお帰りください」

「…渡辺さん、満里奈さんの病気って一体なんなんですか?それを聞いたら帰ります」

冷たい態度の一馬に引き下がる事なく、零士が問う。

「…貴方には関係のないことだ」
「…私は、満里奈さんの会社の社長です。知る権利はある」

零士の言葉に、溜め息をついた一馬はこう返した。

「…満里奈は近いうちに会社を辞めさせます。ですから、貴方に話す必要はありません」

一馬の言葉に驚いたのは、零士だけではなかった。私も驚いた。

今の仕事が好きだ。ずっと続けていきたいと思っていたのに。なぜ、一馬が、そんなことを勝手に決めてしまうのか?

「…お兄ちゃん、そんな勝手なこと」
「満里奈、詳しい話は後だ。…御崎社長、これ以上、満里奈に近づくのは止めていただきたい。貴方に満里奈は守れない。医者である私以外は」

「…どういう意味ですか?」

「…満里奈は、私と結婚するんです。今までも、これからも、満里奈を守るのは私の役目です。ですから、お帰りください」

「…満里奈、お兄さんと結婚するのか?」

「…私は」

「…とにかく、今日はお帰りください」

一馬は強引に、病室から、零士を追い出してしまった。
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