以心伝心【完】
「ところでさ」
「ん?」
「後藤とアヤの結婚式の件、どうなった?」
「あたし何も聞いてないけど。アヤちゃんから聞いてるんじゃないん?」
「・・・」
「「え?」」
二人で顔を見合わせて首を傾げ合う。
再来週、アヤと後藤が結婚する。
一番の友人であると思ってたのに招待状すら届いてない俺たち。
一体どういう事になってるのか不思議に思う。
「もしかして招待されへんってヤツ?」
「いや、一番招待されなきゃいけないの俺らでしょ」
一体どうなってるんだと二人で文句を言ってると、突然鳴り出すインターフォン。
真が立ち上がろうとしたけど、それを阻止して俺が玄関に向かい鍵を開けたら、すぐに開いた玄関のドア。
「遅くなってごめ~ん!!」
こっちが“どうぞ”も言ってないのに当たり前のように入ってきたのは後藤。
その後を続いて入って来たのはもちろんアヤだ。
うるさくてごめん、と眉を下げて謝る。
確かに騒がしいと思うけど、いつもことだから特に気にしてはいない。
「はい、招待状!」
ソファーに座ってる真の隣に掛けて、バッグから取り出したのは手作りらしい招待状。
普通は式場で用意してくれるであろう招待状が届かなかったのは別に用意されていたかららしい。
キッチンにいた俺も真の背後に移動して一緒に見ることにした。
「それにしても…」
真はその招待状を見て、ポツリと呟く。
「これ、ふざけてんの?」
俺の気持ちを代弁した台詞に後藤は「なんでー?!」と叫ぶ。
真の肩を掴んで真っ正面から「超頑張ったのに!!」と真を揺さぶるからアヤがそれを止めた。
「だって、なぁ?圭一もそう思わん?」
俺に振るなよ、と思いながらも真の無視は出来ないから「そうだな」と小さい声で同意しておいた。
「圭一くんまで言う?!あたし超頑張ったんだよ!裁縫もイラストも超苦手なのに!!」
かなりご立腹な後藤を宥めるアヤに真の言動を見守る俺。
真が次に発する言葉を予想出来ない俺はどうすることも出来ず、ただ真の頭上から真が持ってる招待状を見ていた。
真っ白で綺麗な封筒。
その中に入っていた招待状は全て手書きで、結婚式の招待状というよりも誕生日会の招待状みたいだった。
内容は書き方とかそういうかしこまった文章ではなく、“真と圭一くんには絶対きてほしい!”みたいな言葉だった。
真のおかげで結婚することになったとか、色々心配かけたとか、招待状の内容というより手紙みたいで後藤らしいと言えば後藤らしいけど、常識的に言えば真の言うように“ふざけてる”んだろう。
「これなんだ?」
真の膝の上に置かれた封筒が目に入った俺は少しふくらみがあるのを見つけて、それを手に取った。
封筒を開けると、そこには後藤の言葉の意味がようやく理解できた。
「これ、自分で作ったのか?」
封筒から出したのは後藤お手製の俺と真のマスコット。
ドレスを着た真とタキシードを着た俺が仲良く並んでる。
結婚式を挙げていない俺たちのことを思って作ってくれたんだろう。
「え?これって圭一とあたし?」
俺の手から真の手に渡ったそれは穴が開くほど真に見られ、ようやく気付いた真が後藤に問う。
完全に機嫌を損ねたらしい後藤は真を見ることなく「他に誰がいんのよ」とトゲのある言葉で返した。
「え?ほんま?!めっちゃ上手やんか!むっちゃ可愛い~!!」
さっきの“ふざけてる”発言はどこへやら。
マスコットを見てテンションが上がったのか、それをくるくる回して眺めては「可愛い~!」を連発してる。
「ごっちゃんありがとう!大事にする」
満面の笑みで真にそう言われたら後藤も機嫌を直さざるを得んわけで、自然と笑みをこぼしてた。