以心伝心【完】
これが続くなら強行突破しかない。
これがなんなのか気になるし、真からのプレゼント欲しいし。拒否する理由も知りたいし、いつまでも俺の腕の中にいるその理由も知りたい。
つまり、真の気持ちを知りたい。
「俺のためのプレゼントなんだよね?」
腕の中にいる真にとりあえず確認。
言葉は発さず首を縦に動かす真。それを確認した俺は左で真を抱えたまま右の手だけで器用に包装をはがしてく。
あんなに嫌がってた真は暴れもしないし、何も言わない。気になって見下ろすと両手で顔を隠していた。
悲しいのやら、恥ずかしいのやら、何を思ってんのかわかんないけど、どんな仕草や格好をしても可愛いと思う俺は相当ヤバい。
真が用意してくれた小さなプレゼントはあっという間に姿を現して俺を驚かしてくれた。
まさかのプレゼントに俺は反応すら出来ない。
見間違い?って思ってクルクル回して確認してもやっぱりそれで。
なんでコレ?って思ったのと同時に愛おしさもこみ上げてくる。
俺の手の中には30mlの香水。それは今俺自身が付けている真が『抱きしめられたい』って言っていた香水だった。
見下ろした真は耳まで真っ赤にして顔を隠している。重なる真の心臓の音が早い。表情(かお)が見たい。
「し~んちゃん、こっち向いてよ」
「・・・」
「し~ん」
「・・・」
「真、こっち向いて」
この頑固者め。
返事はしないし、手をどけようともしないし、ぴくりとも動かない。仕方ないから両手で真の手をどけると簡単にも外れて、真の表情が見えた。
「・・・なんて顔してんの」
真っ赤にして今にも泣き出しそうな顔。びっくりして思わず手を離すと真は顔を俯けた。
もう遅いよ、見ちゃったし。
てか、今日の真は可愛すぎる。もう何度目かわかんない“可愛い”に自分でも呆れる。
長くてサラサラの髪。黒い髪が白い肌を強調して溢れる色香。
無意識なところがまた困ったもんだ。無意識に垂れ流されると、この先苦労するんだろうな、なんて考える。
それよりもまずはコレの話。両腕で真を抱きしめ直すとぴくっと反応したけど、それは無視して両手で香水を包むように持って真の前に差し出す。
「なんでコレくれたの?」
「・・・」
「俺のために選んでくれたんだ?」
黙ったままでもこうして抱きしめられてるから別に良いんだけどね。いいんだけど、やっぱりちゃんと真から言葉で聞きたいって思うのは普通であって、我が儘でもなんでもないと思うわけ。
恥ずかしいのもわかるけど、今更なのもわかりすぎるくらいわかるけど(俺も同じ)、ここはちゃんとしたい。あやふやで中途半端なのは嫌なわけで、はっきりさせたいのが俺。
「なんで黙ってるの。今日、俺の誕生日だよね?」
ちょっと強制的な感じだけど喋らない真が悪い。ちゃんと言葉で聞かせてほしいから。
「香水、変えた」
会話、繋がってないように思うのは俺だけ?
「誰が?」
「圭一」
「あー、変えたね。コレと同じだね」
俺が香水つけてたの知ってたんだってことにちょっとびっくりした。
「だから、渡したくなかった」
「なんで?」
「だって」
「だって、なに?」
「・・・貰ったんじゃないの?」
何を言ってるの、この子は。声も震えて今にも泣きそうだし。
何を考えてるのかわかんないけど、俺が香水を変えた理由が他の誰かの為だって言いたいらしい。そんなの真のためでしかないのに。