以心伝心【完】
そうやって不機嫌な顔して俺に見られないように数歩前を歩いても、今買った服が入ってる袋を力一杯抱えてたらバレるんだって。言葉にしない分、全身で表してくれる真がまた可愛いんだけど。
「真が嫉妬してくれないから連絡とろっかな」
とうの昔にメモリー消してるから当然番号もアドレスも覚えてないけど、ちょっとした意地悪と駆け引きで言ってみた。だけど案の定、失敗した。
隣に並んだ真は不機嫌通り越して真顔で歩いてる。俺の存在なんて忘れた、みたいな顔してスイスイと人波を抜けていく。
こうなったら大変だ。一度ここまで機嫌を悪くさせたら浮上させるのに時間がかかる。
嫉妬してくれてるとわかった時点で止めてりゃよかったのに調子乗って口走るから後悔する。わかってるけど言葉で聞きたくて毎回繰り返してしまう俺は相変わらず学習能力がない。
「真、待て。待てって」
すたすた歩き進む真の腕を掴んで反対側に抜けられる通路へ引っ張った。
「なに」
「なに、って」
「好きにしたらって言うたやん」
「じゃなくて、なんで怒ってんの」
「別に」
否定しないってことは怒ってるってこと。怒ってないって言わないだけ今日はまだマシだけど厄介には変わりない。
目は合わそうとしないし、腕を掴んでる手を離そうとするし、人通りの少ない場所へ連れて行き落ち着かせようと抱きしめたら全力で逃げようとするし、懐いてたのに急に嫌われた猫みたいで辛いことこの上ない。
「ごめん。連絡なんて取るつもりないから」
「・・・」
「ちょっと意地悪言っただけだから」
「別に。好きにしろって言うたし」
真の何が厄介かって、売り言葉に買い言葉の自分で言った言葉を意地でも訂正したり謝ろうとしないところ。
結局、俺が折れて謝れば済むことなんだけど、たまにそんな真に苛立って俺も意地になって喧嘩になることがある。
でも、今日は久しぶりのデート。こんなところで喧嘩なんてしたくないし、できればこの険悪な空気は早めに消し去りたい。
「真」
低く、そして強く、はっきりと呼んだ名前にピクリと反応する。
真だってちゃんとわかってるはず。ムキになって意地を張って自分がこんな雰囲気にしてるってこと。だからそうやって、目を伏せて眉を下げて泣きそうな顔をする。
「ごめん、なさい」
人が通るから今日はしないけど、家なら確実にキスしてる。だって真は俺の服の裾を掴んで離さない。抱きしめてたはずなのに今は抱きしめられてる。可愛くて堪らない。
連絡なんてとってほしくないって言葉で言ってくれたら、もっと可愛いのに。
「真、人が見てる、よ?」
本当はもうちょっとこうしていたいけど、さっきから人目が気になって落ち着かない。しかし、このまま家に帰ってしまうのも勿体ない。
俺の言葉に勢いよく離れた体を逃げないように、引き寄せて額にキスを落とした。
「な、圭一っ!?」
“圭一”って名前も真が呼ぶから嬉しくなる。もっと呼んでほしくなる。
真以外の女に呼ばれたって嬉しくないし、真じゃないと俺に名前がある意味がない。そう思えるくらい真の全てが愛おしい。好きっていうか、愛しちゃってる感じ?
「圭一」
「んー?」
「圭一、離れて」
「やだ」
「圭一!!」
「もう一回」
「アホ!!」
こんなのがいい。俺と真はこれが自然体。ちょっとだけ俺が優位に立ってて、照れ隠しに怒ってる真を可愛くて愛おしいと思えるこの時間が一番いい。
「そういや、真の元カレって誰なの?」
ちょっとした好奇心だった。自分の元カノがバレた、というか知られた?んだから真の元カレだって知りたい。
だって俺が真を意識したのは真がソイツに振られた日だから。
知ったら知ったで顔見知りだったら嫉妬しまくるんだろうけど気になり始めたら気になるもんは仕方がない。
「真が嫉妬してくれないから連絡とろっかな」
とうの昔にメモリー消してるから当然番号もアドレスも覚えてないけど、ちょっとした意地悪と駆け引きで言ってみた。だけど案の定、失敗した。
隣に並んだ真は不機嫌通り越して真顔で歩いてる。俺の存在なんて忘れた、みたいな顔してスイスイと人波を抜けていく。
こうなったら大変だ。一度ここまで機嫌を悪くさせたら浮上させるのに時間がかかる。
嫉妬してくれてるとわかった時点で止めてりゃよかったのに調子乗って口走るから後悔する。わかってるけど言葉で聞きたくて毎回繰り返してしまう俺は相変わらず学習能力がない。
「真、待て。待てって」
すたすた歩き進む真の腕を掴んで反対側に抜けられる通路へ引っ張った。
「なに」
「なに、って」
「好きにしたらって言うたやん」
「じゃなくて、なんで怒ってんの」
「別に」
否定しないってことは怒ってるってこと。怒ってないって言わないだけ今日はまだマシだけど厄介には変わりない。
目は合わそうとしないし、腕を掴んでる手を離そうとするし、人通りの少ない場所へ連れて行き落ち着かせようと抱きしめたら全力で逃げようとするし、懐いてたのに急に嫌われた猫みたいで辛いことこの上ない。
「ごめん。連絡なんて取るつもりないから」
「・・・」
「ちょっと意地悪言っただけだから」
「別に。好きにしろって言うたし」
真の何が厄介かって、売り言葉に買い言葉の自分で言った言葉を意地でも訂正したり謝ろうとしないところ。
結局、俺が折れて謝れば済むことなんだけど、たまにそんな真に苛立って俺も意地になって喧嘩になることがある。
でも、今日は久しぶりのデート。こんなところで喧嘩なんてしたくないし、できればこの険悪な空気は早めに消し去りたい。
「真」
低く、そして強く、はっきりと呼んだ名前にピクリと反応する。
真だってちゃんとわかってるはず。ムキになって意地を張って自分がこんな雰囲気にしてるってこと。だからそうやって、目を伏せて眉を下げて泣きそうな顔をする。
「ごめん、なさい」
人が通るから今日はしないけど、家なら確実にキスしてる。だって真は俺の服の裾を掴んで離さない。抱きしめてたはずなのに今は抱きしめられてる。可愛くて堪らない。
連絡なんてとってほしくないって言葉で言ってくれたら、もっと可愛いのに。
「真、人が見てる、よ?」
本当はもうちょっとこうしていたいけど、さっきから人目が気になって落ち着かない。しかし、このまま家に帰ってしまうのも勿体ない。
俺の言葉に勢いよく離れた体を逃げないように、引き寄せて額にキスを落とした。
「な、圭一っ!?」
“圭一”って名前も真が呼ぶから嬉しくなる。もっと呼んでほしくなる。
真以外の女に呼ばれたって嬉しくないし、真じゃないと俺に名前がある意味がない。そう思えるくらい真の全てが愛おしい。好きっていうか、愛しちゃってる感じ?
「圭一」
「んー?」
「圭一、離れて」
「やだ」
「圭一!!」
「もう一回」
「アホ!!」
こんなのがいい。俺と真はこれが自然体。ちょっとだけ俺が優位に立ってて、照れ隠しに怒ってる真を可愛くて愛おしいと思えるこの時間が一番いい。
「そういや、真の元カレって誰なの?」
ちょっとした好奇心だった。自分の元カノがバレた、というか知られた?んだから真の元カレだって知りたい。
だって俺が真を意識したのは真がソイツに振られた日だから。
知ったら知ったで顔見知りだったら嫉妬しまくるんだろうけど気になり始めたら気になるもんは仕方がない。