以心伝心【完】

「で、終わり?」
「まだ」

まだ終わってない。これからが俺にとっては一番気になる所なんだ。
目の前にいる女が俺を好きでいてくれてるとわかっていても聞くのは辛い。だから、ヘタレな俺に勇気と自信を与えてほしい。

「真、俺のこと好き?」
「な、なに急に?」
「いいから。好き?」

この次を聞くためにはどうしても聞きたい。過去を、泣くほど好きだった相手の話を聞くのに俺が嫉妬しないわけがない。

「それ、今必要?」
「かなり。今じゃないとダメなの」

恥ずかしがって言ってくれないのは分かってる。真っ赤になって俯いてやり過ごそうという魂胆も読めてる。
でも今だけは絶対に言ってほしい。どうしても聞きたい。
過去の男に、結婚してる男に妬くのもどうかしてると思うけど、それでも今の俺しか見えてないっていう証拠を言葉で欲しい。

「真、どんな形でもいいから俺のことが好きだって気持ち、」
「好き」
「・・・」
「好き、大好き」
「真」
「今のあたしは、圭一が一番好きだ、うっ?!」

言い終わらないうちに真の言葉が聞けた上にまさかの“大好き”で、衝動的に抱きしめて最後まで聞けなかった。
聞き慣れない言葉にドキドキする。

「不安になってる圭一ってキモイー」

そうやって照れ隠しで文句言う真を好きな俺はバカかもしれない。普通、好きな男に“キモイ”とか言わないし。でも真っ赤な顔と心臓の早さは正直で可愛さは倍増する。

「彼氏にキモイ言うな!」
「自信過剰なくらいが圭一らしいのに」

話が噛み合わなくても、男前の俺にキモイと言っても、真だから許せるし、真だからそんな部分も愛せる。

さりげなく背中に回された手は服を掴んでて胸に埋められた顔は笑ってる。何年一緒にいてもこうしていたいと思うのは真だけで、これからもこうしていたいと思うのも真だけ。
抱きしめた温もりに安心するのは真だから。

「俺、ヤバいわ」

真と離れるなんて考えられない。いつの間にか真依存症になってたらしい。もうこれは決定的かもしれない。

「やば、眠なってきた」

そりゃ困る、と抱きしめてた腕を離すと笑顔をくれた。
もう、過去とかなんでもいい―――そう思わされる。真が笑顔をくれるだけで俺の心は満たされる。

「よし!真のおかげで準備万端だし、続き聞こうかな」

なんの準備よ、と呆れ笑い。隣にいるのに繋いだ手はお互い離さなかった。
真がこの続きに気付いてるんじゃないかと思う。

過去を掘り返すのはバカのすることだと思う。互いに傷付くだけ。
“全部知りたい、そして真の全てを受け止める”そう思うことは俺のエゴでしかない。全て自分の為にすることで真の気持ちなんて考えてない。真が“話す”と言ってくれたことに甘えて自分のエゴを押し付けてるだけだ。
わかってる。わかってるけど止められない。どうしても聞かずにはいられない。

「真は、あの男に本命がいること、知ってて付き合ってたんだよな」
「知ってた、よん」
「はぁ~」
「溜息吐くな!」

真に呆れて出したわけじゃない。自分の醜さに出たんだ。
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