以心伝心【完】
俺たちがルームシェアを始めて、もう6年が経つ。いや、今は“同棲”と言うんだろうか。
とにかく、一緒に住み始めて6年が経つ。

相手は誰かって?そりゃあ、関西弁のどぎつい真ですよ。
俺にしてみれば驚異的な話。
誰も6年も続くと思わなかった。
誰も想像していなかったのに、未来は誰にもわからないものだと身をもって知る今日この頃。

何も変わらなかったわけじゃない。何も得なかったわけじゃない。

「圭一、何してんの。一人で話して、気持ち悪い」

何年経っても空気の読めない彼女で、本当にすみません。
相変わらず言葉遣いが荒く、ストレートで、キツいけど、ちゃんと愛してくれているので文句は言えません。

とにかく、俺たちは大学を卒業した今も一緒に住んでいます。

















「この鈍感女!」

これが俺の精一杯の告白だった。
大嫌いだった女とルームシェアを始めて、卒業間際に愛しちゃいました!なんて、そんな恥ずかしいこと言えるわけがない。
大嫌いだった女を好きになるなんて、俺のプライドが許さない。
だけど、愛しちゃったもんは仕方がない。

しかしそのあと、話題と空気は完全に逸れてしまい、俺は完全に告白のタイミングを逃していた。
真は今の空気なんてなかったみたいに普通に箸を動かしているし、次にあんな空気になるのはいつになるのかと不安は募るばかり。
もしかしたら二度とこないかもしれない。相手はこの真だし、真はきっと・・・なんて考えれば考えるほど、気持ちは落ちていくばかりだった。

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