以心伝心【完】

昔は幸せすぎることに不安を感じてたけど、今は幸せすぎても、それがずっと続くように努力するようになった。

大きなことは望まん。思い描く未来から逸れてしまっても、“大好きだ”って“大好きだよ”って言って手を繋げば、ちゃんと元に戻ってこれる。

夢に見た幸せな日々って、こうも簡単に手に入っちゃってええんか?!って思ったこともあったけど、よくよく考えれば、どれもこれも圭一がおるからやなって思えた。

「圭一」
「なに?」
「次の子供の名前、何にしよっか?」

あたしと圭一の間に安心したように眠る優輝の寝顔を見つめる。

「女ならケイがいい。男ならケイマがシンイチ」
「自分の名前を付けたいのね」
「ケイの漢字はホタルで“蛍”。ケイマは俺の圭に真の字で“圭真”、シンイチも俺と真の字で“真一”ね」
「なんでホタル?」
「ホタルって見てるだけであったかくなるじゃん。なんかあの明かりって安心しない?」
「うん、わかる」
「そんな女の子になってほしいから」

優輝の時も「女の子なのに、そんな男の子みたいな名前」って圭一のお母さんに言われたけど、“優しさが輝くって意味で優しい女の子になって欲しい”って圭一が言うから優輝に決まったし。
あたしは子供が出来たら名前は圭一に決めてもらおうって思ってたから、圭一が決めた名前なら全部OK出すつもりでおった。もっと考えるかなって思ってたから悩むこともなく“優輝”って出た時は意外やったけど。

「どっちかな?」
「どっちでもいいよ」
「二人目も女やったら老後も二人になるな」
「いいじゃん、それで」
「あたしがシワくちゃになっても愛せる?」
「それは真も一緒だろ?」

布団の上から優輝のお腹の上に置いていたあたしの手に触れて、圭一は指を絡ませて同じように優輝のお腹の上に手を乗せる。

「心配しなくても、ずっと愛してあげるから」

微笑んだ圭一の顔を見て、生意気に言いやがってと顔をしかめた。
圭一はそんなあたしを見て微笑む。変らん笑顔がすぐ隣に、近くにある。




あたしは幸せだ。

胸が温かくなるのを感じながら、ゆっくりと目を閉じた。





‥all end‥
H22.05.12 完全完結
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