以心伝心【完】
時計を確認してドレスを手にとる。
“胸の開いてるものは禁止”って圭一に言われたから少し控えめで黒のドレス。
下着姿になった自分を見て違和感。
「あたし、太った…?」
数週間前から感じてた違和感。
ウエスト辺りがちょっとキツイな、と思ってた。
でも毎日忙しくて、毎日どの時間になにを食べてたか、そんなことを気にする余裕もなくて、自分の身体を気にしてなかったけど、改めて見てみると結構キてる。
「痩せな・・・」
ウエストを掴んで溜息を吐く。
体型の自己管理を怠ってんのは事実。
現実を受け止めるのは自分。
とりあえずドレスは入って安心した。
隣のバカ男を壁越しに見る。
あれから物音一つせん、ということは起きてないってこと。
もう放って先に行くつもりやから今更起こすつもりはないけど、ほんまに呆れる。
仕事で疲れてるのはわかる。
睡眠不足なのもわかる。
起こしても簡単に起きんほど爆睡してんねやから寝かせてあげたい気持ちだってある。
X'masパーティーだって毎年のことやし、メンツも一緒やし、たいていのことなら融通も利くし、許してくれる。
でも、それでも約束は守るべきやし、幹事も一生懸命準備してくれてる。
だから少しでも早く行って手伝ってあげようって思ってんのに、あのバカ男は寝てる。
「やば、時間!」
コートを羽織り、バッグ片手に部屋を出る。
物音一つしない隣の部屋の前に立って、ノックしようとした手を下げる。
放って先に行くって決めたんやから気にする必要ないと自分に言い聞かせて、踵を返して玄関に向かう。
玄関を出る前に、もう一度部屋のドアを見てみるけど、やっぱり物音一つしないし、出てくる気配もない。
いつからこうなったんかな?と苦笑する。
もう何年も一緒におって、最近は何をするにも一緒で、こうやって一人で行動することが少なくなって、そうなると一人が寂しく感じるようになった。
今日も一緒に行こうって約束したのに。
そのために仕事も早く終わらせて急いで帰ってきた。
それやったら起こせば?って言われそうやけど、圭一が疲れて帰ってきてるのを見てたら、毎年恒例のX'masパーティーくらい別に参加させんくても休ませた方がええかな、と思ってしまう。