鐘守りの少女と夢見る王子
夢見る蝶
マクベスは塔へ通いながらも、少女に話しかけることのないまま月日が経った。
「王子様、最近は勉学に身が入りませんねぇ。あんなに熱心に書斎に通っていらしたのに」
「……」
ロイドがため息をつくのを横目で眺めながら、机に頰杖をつく。
マクベスは鐘のことを調べ尽くしてからは、とんと書斎に向かわなくなった。
学問なんて本当に面白くない。
こうして本なんかを開いている暇があるなら、外に飛び出して剣術の鍛錬でもしたい。
ロイドと2人して深いため息をつくと、ちょうど正午の鐘が鳴った。
マクベスは音に誘われるように窓の外に目を向ける。
「……もう正午ですね。今日は勉強に身が入らないようですし、終わりにしましょうか」
マクベスの様子を見かねたロイドがそう告げる。
「いいの?」
きょとんとロイドを見上げると、彼は諦めたように肩をすくめた。
「今日だけですよ。明日からはちゃんと時間どおりに……」
「ありがとうくそメガネ!」
ロイドが言い終わりもしないうちにマクベスは部屋を飛び出し、ロイドは再び肩をすくめるのだった。