鐘守りの少女と夢見る王子
マクベスは息を切らしながら、塔の前に立った。
鐘はまだ鳴っている。
中を覗きこめば、いつもどおりあの少女が鐘を鳴らしているのが見える。
「……」
そしてマクベスもいつもどおり、睨みつけるようにしてその様子を見つめていた。
「!」
最後の鐘を鳴らし終えたとき、急に少女が床に倒れこんでマクベスは目を見張る。
少し迷ったあと、急いで塔の中に入り込んで少女の傍らに膝をついた。
少女の顔を覗きこむと、血の気のない頰をしていた。
やはり無理をしているのだと感じた。
いつもだったら咳こむ程度なのに今日は倒れてしまったということは、鐘に命を削られている証拠だろうか。
「おい、起きろ」
少女の細い肩に手をかけ体を揺すると、彼女はうっすらと目を開けた。
「きゃ……!」
そしてマクベスの存在を認識すると、目を見開いて飛び起きた。
その反応が気に食わなくてむっとしていると、少女は何かに気づいたようにはっと表情を変えた。