鐘守りの少女と夢見る王子
「ロイド……」
「はい?」
「ロイドは、誰かを泣かせたことある?」
自分ではどうしたらよいかわからなくなり、ついにロイドに助けを求める。
ロイドは目をぱちくりとさせたあと、記憶を探るように顎に手を当てて考え始めた。
「泣かせたこと? そうですね、最近はないですが……ああ! 妻にプロポーズをしたときに」
「いや、そういうのじゃなくて」
惚気話が始まりそうになった気配を察知して、素早く断ち切った。
ロイドは少し残念そうな表情を浮かべたが、すぐに気を取り直してまじめに答える。
「ありますよ、子どものときですが。友人の大切にしていた玩具を壊して泣かれてしまいました」
「……それから、どうしたの?」
「謝りましたよ。ごめんなさいって」
「それだけ?」
「いえ、代わりのものをプレゼントしました。大切にしていた玩具には遠く及ばなかったのですが、しぶしぶ許してもらえました」
「……ふぅん」