鐘守りの少女と夢見る王子

欠けたステンドグラスの窓の向こうにマクベス王子の姿が見え、心臓が大きな音を立てる。


(なんで……)


今日は来ないだろうと思い油断して心の準備が出来ていなかったエリアルは、隠れる物もない塔の中をうらめしく思った。

とうとう中に入ってきてしまったマクベスと向き合いながら、エリアルは逃げることもできずにきゅっと眉を寄せて彼を見つめる。


マクベスはエリアルと目があうと、彼もまたどんな顔をしたらいいかわからなかったようで、目を泳がせたのちに口を開いた。


「……昨日は、ごめん」


そう一言、マクベスに告げられ、エリアルは目を見開く。

そして黙ったまま視線を下に向けた。


黙り込んでいるエリアルにマクベスが近づく。

その度にエリアルは一歩うしろに後退し、ついには壁際まで詰められてしまった。


「お詫びがしたいんだ」


どうして何も言わないで近づいてくるのかと不思議に思ったところで、ようやくマクベスが口を開き、エリアルは顔をあげた。


< 20 / 32 >

この作品をシェア

pagetop