鐘守りの少女と夢見る王子
「来て」
驚いてばかりで何も声を出せないまま、マクベスに手を引かれて塔の外へ連れ出された。
明るい陽射しがエリアルを包み込み、その眩さに目を細める。
エリアルの手を引いて、マクベスは急ぎ足で前へ進んでいく。
エリアルはわけもわからずひたすら彼のあとを追っていると、ふいにマクベスが足を止め、彼の背中に軽くぶつかってしまった。
謝ろうと口を開きかけたが、目に飛び込んできた景色にはっと息を飲んだ。
そこは目の前に海の広がる、崖の上の野原だった。
足元には野花が咲き乱れ、海は陽を受けてきらめき、潮風を吹かせてエリアルの頬を撫でる。
「……」
エリアルは瞬きもせず景色に魅入っていたが、やがてぽろぽろとその目から涙をこぼした。
泣き出したエリアルに驚くマクベスの隣で、彼女は地面に座り込んで手で顔を覆う。
膝に当たる土の感触。
頬を撫でる風の優しさ。
鼻をくすぐる花の香り。
体を包み込む陽の光……
すべてが、愛おしくてたまらなかった。