鐘守りの少女と夢見る王子
「くそメガネ!」
近くの椅子を蹴り飛ばし、勢いよく壁へぶつけた。
自分が咎められるより何よりも、自分のせいで彼女がもっと辛い状況に置かれるかもしれないことが怖かった。
「ごめん、エリアル……」
彼女の涙を思い出す。
本当は辛いくせに、悲しいくせに、その気持ちを押し殺して健気に笑って、自分の使命だと言っていたエリアル。
エリアルが皆のため、家族のためにと鐘を鳴らし続けるのなら
俺が変えてやる。
王になって、この国を。
あの子が鐘を鳴らさなくてもいい世界に変えてみせる。
(それが俺の、使命だと思うから)
顔をあげて真っ直ぐに窓の外を見るその目に、迷いはなかった。