鐘守りの少女と夢見る王子
エリアルは警備の厳しくなった塔の中で、静かに鐘を見上げていた。
きっともう、マクベスはここへは来られない。
少しの間、見た夢。
エリアルは涙が頬を伝うのを感じて、指先でそれにそっと触れた。
悲しいのは、外へ出られないということよりも、もうマクベスに会えないということ。
この数ヶ月、マクベスがここへやって来るのを数えるのが密かな楽しみだった。
そして自分に話しかけてくれた、唯一の相手だったのに。
「マクベス王子様……」
こみ上げる悲しみを我慢できずに、声を漏らしたときだった。
塔の片隅で小さな物音がし、エリアルははっと振り返る。
欠けたステンドグラスの窓の向こう。
そしてそこから顔を覗かせた人物に、胸が大きく高鳴った。
「王子様!」