鐘守りの少女と夢見る王子
エリアルは急いでそばへ駆け寄る。
「なぜここに……」
「エリアルに会いに来た……しばらく会えなくなるから」
マクベスはそう言ったあと、申し訳なさそうに視線を落とす。
「俺のせいでこんなことになってしまった」
「そんなこと言わないで。わたしは今までと変わりなく、鐘を鳴らし続けるだけです」
そう告げるエリアルに、マクベスは一瞬切なそうな表情を浮かべたが、すぐに真面目な顔つきをしてエリアルを見た。
「俺が君の家族の代わりに、君を想うよ」
目を見張るエリアルを、マクベスは真っ直ぐに見据える。
「それを伝えにきたんだ。だから待っていてくれ。いつか必ず君をここから助け出す」
約束だ、そう言って彼が差し出してきた手を、エリアルはじっと見つめる。
彼は自分とは違う、未来あるこの国の王子様。
そんな人がエリアルのことを想ってくれるという。
助けてくれると言ってくれる。
はらはらと涙がこぼれ落ちるのもかまわず、エリアルはマクベスの目を見つめ返した。
そして、涙まじりの笑顔でマクベスの手をとる。
「……はい」
たとえ叶わない夢でも。
そう言ってくれるあなたのためにわたしは鐘を鳴らし続けるわ。
そう胸に誓って。