鐘守りの少女と夢見る王子
エリアルは王宮の奥まで連れられ、白い塔の中へと入った。
壁はステンドグラスで飾られており、そこから淡い光が塔の中に入りこんでいる。
天を仰ぐと、大きな鐘があった。
エリアルはその鐘の美しさに息をのむ。
「ここがお前の仕事場だ」
そう言いながらエリアルをここまで連れてきた男がエリアルの手首に鎖をつけ、エリアルは内心ぎょっとしながらも黙ってそれを眺めた。
「逃げられたら、困るんだ」
男は少し申し訳なさそうに眉を下げ、エリアルの頭を軽く手を乗せ、すぐに離した。
エリアルは鎖を見つめながら、噂は本当なのだと感じていた。
前に街で聞いた噂では、王宮で一番酷な仕事は鐘を鳴らすことで、死者もあとをたたないため、逃げ出す者もいる。
そのため逃げられないように鎖をかけるのだと。
「毎日決まった時間に必ず鐘を鳴らしてくれ」
男の指示に、エリアルは頷く。
こうして、エリアルでの王宮での生活が始まった。