鐘守りの少女と夢見る王子
人に見つからないように、物陰を選んで鐘のある白い塔へと近づく。
塔は天高くそびえ立っていて、大きく見上げなければ先が見えない。
マクベスは塔を見上げ、その一番上にある鐘を初めて目にした。
「きれいだ……」
その美しさに、無意識に言葉がこぼれ落ちる。
鐘は陽の光を浴びて黄金に輝いている。
まるで夜に輝く月が、真昼の空に現れたかのようだ。
身を隠すことも忘れて鐘に見惚れていると、誰かが咳こんでいるのが聞こえてはっと我に返った。
警戒しながら辺りを窺うと、また聞こえてきた。
咳の感じからして、どうやら子どものようである。
そしてどういうわけか塔の中から聞こえてくるので、マクベスはさらに塔に近づいた。
こんなところに子どもが……?
訝しみながら塔の中を覗きこむ。
そして中にいる人物を目にしたとき、鐘を見たときよりも強い衝撃が走った。