鐘守りの少女と夢見る王子

人に見つからないように、物陰を選んで鐘のある白い塔へと近づく。

塔は天高くそびえ立っていて、大きく見上げなければ先が見えない。

マクベスは塔を見上げ、その一番上にある鐘を初めて目にした。


「きれいだ……」


その美しさに、無意識に言葉がこぼれ落ちる。


鐘は陽の光を浴びて黄金に輝いている。

まるで夜に輝く月が、真昼の空に現れたかのようだ。


身を隠すことも忘れて鐘に見惚れていると、誰かが咳こんでいるのが聞こえてはっと我に返った。

警戒しながら辺りを窺うと、また聞こえてきた。

咳の感じからして、どうやら子どものようである。

そしてどういうわけか塔の中から聞こえてくるので、マクベスはさらに塔に近づいた。



こんなところに子どもが……?



訝しみながら塔の中を覗きこむ。


そして中にいる人物を目にしたとき、鐘を見たときよりも強い衝撃が走った。


< 5 / 32 >

この作品をシェア

pagetop