悠久のシャングリラ


「な、ならどうして貴女たちは
自分の名前を知ってるの!?」


言われてみれば……。

たしかに私たちに、藤と桜って、
そう名乗ったんだ。 この二人は。


「僕たちも自分の本当の名前は知らないよ。
けど、名前が無いのは不便だから」

「適当につけたんですか?」

「いや違うぞ。
倒れていた場所に花があってな。
その花の名前を拝借したんだ」

「倒れていた場所に……?
ああ、確かに何か咲いてたような……」


話を聞くにしても名前は必要だと言われ、
私たちはもう一度あの薄暗い空間に戻ることになった。

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