悠久のシャングリラ
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「……確かこの辺……だったかしら?」
「あ、ここに咲いてますよ!」
薄紫色の花が、
可憐にぽつんと咲き誇っている。
その少し離れた先の方にも、
真っ白に開いた花が咲いていた。
「ここは、あたしがいた場所ね。
そっちの白い花が貴女でしょ?」
「そうみたいです」
(こんな花が咲いていたなんて、
全然気がつきませんでした……)
「君の花は、桔梗……みたいだね」
「それじゃ、あたしの名前は
桔梗ってことになるのね」
「ああ、そうだな。
そっちの娘さんの花は……」
みんなが私の方へと集まってくる。
しゃがみこんで花を見ていた私は、
三人の顔を見上げる形で答えた。
「私のは、ユリの花みたいです」
「ユリ……なら、君の名前は百合だね」
名前が決まったところで、
向かい合わせの状態になる。
「これからよろしくな。 百合、桔梗」
「よろしくね」
「よろしくお願いします! 藤、桜」
「……まだ貴女たちのこと、
信用したわけじゃないから……」
自分の仮の名前を得られ、
大きかった不安が小さくなるのを感じる。
これからどうなるのかはわからない。
何が待ち受けているのかも、
定かではない。
けれど、一人じゃないことに
勇気をもらえているような気がしたーー。