悠久のシャングリラ


「なら、なんでここに来たんだよ。
用がないならさっさと帰れ!」


苛立ち気味の鈴蘭が声を上げ、
ソファーから立ち上がった。

視線を向けたクイナは、
緩く口角をあげ微笑んだ。


「ここに来たのは、
ーーこれを渡すためさ」


鈴蘭に向かって何かを投げつける。

彼の手に収まった、その小さなものはーー。


「は!? こ、これって……!」


探しても見つけられなかった、
ステンドグラスの欠片だった。

化け物もおらず困り果てていたのに、
どうしてこの人が持っているのだろうか。


「…どういうつもり?」


警戒をあらわにしながら、
鳳仙が私に近づき腕を引いた。


「きゃっ!」


私を腕の中に閉じ込めると、
クイナからさっと距離をとる。

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