悠久のシャングリラ


「またわたしは、
怪しい者扱いされているのかな」

「そう。
だから、近づかないでくれる?」


間髪入れずに答え、
クイナを睨みつけているのが
気配で感じ取れた。


(どうして、そんなに警戒して……?)


クイナは、あのタマゴ型の置物を
わざわざ持ってきてくれた人だ。

私たちの質問にも一つずつ、
ちゃんと答えてくれていた。

私たちの味方だと思ったのに、
鳳仙の捉え方は違うのだろうか。


「どういうつもりか、ときみは聞いたね。
答えは、単純でいて明快……」


ついと目を細めると、
感情の見えない表情でこう告げた。


「ーー言っただろう?
『早く記憶を取り戻してほしい』と」


面の耳についている二つの鈴が揺れる。

動きもせず、風も吹いていないのに。

ただ静かに……それは揺れていた。

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