悠久のシャングリラ


**

持ってきた水を机に置いていたとき、
ほんの僅かに睡蓮の手が動いた。

私は目覚めたのかと思い、
必死に彼の名前を呼び続けた。

そしてーー。


「………ん……んん………」

「睡蓮っ!」


やっと目が覚めた。

まだ焦点の合わない瞳が、私を捉える。

握りしめていた睡蓮の手に、
ぎゅっと力を込めた。


「睡蓮……。
私が誰だか、わかりますか……?」


起きたばかりの睡蓮を驚かせないように、
静かに口を開いた。

睡蓮は、こくりと頷く。

< 118 / 306 >

この作品をシェア

pagetop