悠久のシャングリラ


「睡蓮!
どうしたんですか!?」


慌てて、
彼の押さえている左腕に目をやるとーー。


「……これ、は……?」


黒ずんだ腕に、灰色の爪。

まるで蛇のように睡蓮の腕に巻きついている黒い炎は、今にも彼を飲み込もうとしていた。

思いもしなかった光景に言葉を失った私に、
睡蓮は脂汗を滲ませながら微笑む。

安心させるように、心配させないように。

ただそれだけを願っているような笑みに、
私はついに泣いてしまった。


「……っ」

「…大丈夫。 大丈夫だよ」


優しく子供に言い聞かせるように、
「大丈夫」を繰り返す睡蓮。

その最中も、頭に置かれた手のひらが
私を何度も撫で擦る。


「だから、泣かないで。
キミに泣かれるのは嫌なんだ」

「……はい……」


温かな言葉たち。

仄かな光が、ぽっと灯る。

その心地良さに身をゆだねながら、
私はゆっくりと目を閉じたーー。

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