悠久のシャングリラ


「あ、みなさん。 ここ見てください!
こっちの壁、動くみたいですよ!」

「っ、百合!
勝手に行ったら危ないよ!」

「! ご、ごめんなさい」


掴まれた手首が、少し痛い。

でもその痛みが、
睡蓮の気持ちを表しているようで……。


(……か、顔が熱いです……。
心臓がドキドキしています……)


この逸る心臓が手首の脈を通して
睡蓮に聞こえてしまわないか。

顔が赤くなっていることを悟られないか。

ただ心配してくれただけなのに、
そんな場違いな気持ちで埋め尽くされる。


「…ありがとうございます」


さりげなく手をほどいたものの、
目を合わせられずに俯いた。

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