悠久のシャングリラ


『なんであたしばっかり……。
もうヤダよ……』


そんな幼い自分の後ろ姿を、
大きくなったあたしが眺めている。


(自分の姿を自分で眺めるって、
なかなかにない図よね……)


なんとも言えない気持ちで
ため息をついた時ーー。


『泣いてるの?』


突然の、気遣う優しい声。

幼いあたしの小さな肩が、
その声に反応して大きく揺れた。

急いで涙を拭うところを見ると、
この頃から自尊心が高かったのだと、
思わず苦笑してしまった。


『な、泣いてないわ!
貴方の勘違いじゃないの!?』

『そうなの……?
でも、目が赤いよ……?』

『うっ……』


(この時のあたしは、
誰かもわからない子に言われて、
少しイラついてしまったのよね……)

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