悠久のシャングリラ


(この時の言葉がどれほどあたしを救ったか。貴方は知らないでしょうね……咲夢梨)



あたしにとって唯一の希望で、
暗闇を照らすかけがえのない光。


『それに私、【桔梗】が好きなの!』

『【桔梗】……?』

『明智っていう人のしょうちょう…? は、
【桔梗】だってお母さんが言ってたよ!』

『………桔梗………』


嫌いだった名前に、好きになれそうな
要素を与えてくれた。

意図したことじゃなかったとしても、
あたしには十二分に救われる言葉だった。


『桔梗……桔梗…ね……』




幼いあたしが呟いた瞬間、
一斉に小鳥が羽ばたく羽音がした。


上を仰げば、青空が広がっている。


青空に白い鳥が重なって、
どんよりしていた今までの心が
綺麗に洗われた気がした。



(ありがとう、咲夢梨。
貴方のお陰であたしは前を向けたーー)



夢の中にはっきりと映る太陽の光が
あたしをキラキラと照らしていた……。

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